世界2位の透明度を誇る「摩周湖」は、実は湖ではなくただの水たまり
こんにちは。うんちく星人です。
先日、私の家に高校の友人が遊びに来ました。
土日の二日間で遊び、1日目は秘湯「カラマツの湯」、知床、野付半島をまわり、2日目は摩周湖、神の小池、阿寒湖、釧路をまわりました。
私にとっては見慣れた景色ですが、都会に住んでる友人らはスマホで写真をいっぱい撮りずっと景色に黄昏ていました(笑)
とても満足したようで、私が田舎に住んでいてよかったなあと思いました。
で、このドライブ中に友人らにある疑問を投げかけられました。
それは
「なんで摩周湖は湖畔沿いまでいけないの?展望台しかないじゃん。」
という疑問です。
私も一瞬戸惑いましたが、すぐにその理由が思いつきました。
「だって、摩周湖は湖じゃないもん!」
今回は綺麗で魔訶不思議な摩周湖にまつわる雑学をご紹介します。
摩周湖とは
摩周湖(ましゅうこ)は、北海道川上郡弟子屈町にあるカルデラ湖です。
7000年前の噴火によって形成されたカルデラに水がたまったことによりできたとされています。
その透明度は日本一。世界ではバイカル湖についで世界2位です。
急激に深くなっていることとその透明度から青以外の光の反射が少なく、よく晴れた日の湖面の色は「摩周ブルー」と呼ばれています。
カルデラとは
カルデラとは、火山の噴火によってできる窪地のことです。
火山噴火物が地上に大量噴出した後、中央付近の噴火物のみ火口直下のマグマだまりにより溶かされ、地下に沈んでいくことで形成されます(これを陥没型といいますが他にも種類はあります)。
日本にある代表的なカルデラは阿蘇山にある阿蘇カルデラ、箱根カルデラ、日本最大のカルデラである屈斜路カルデラがあります。
カルデラに水がたまることでできるカルデラ湖は一般的に水深が深い傾向にあります。
湖の種類は他に、断層湖、堰止湖(せきとめこ)、潟湖(せきこ)、河跡湖、氷河湖などがあります。
摩周湖は湖ではなくただの水たまり
「摩周湖はカルデラ湖って、湖(こ)がついているんだから湖なんじゃない?」
と思うかもしれませんが、法律的には湖として認められていません。
湖には普通、河川が形成されます。
ところが摩周湖には7000年経っても河川が形成されていません。
このため、「閉鎖湖」と呼ばれています。
閉鎖湖は国土交通省では湖として認められておらず、国土交通省の管轄になるには河川の形成が必須です。また、摩周湖の中島カムイシュ島には樹木がはえているものの湖に樹木が生えていないため農林水産省の管轄にもあたりません。
つまり摩周湖は、法律的には単なる「水たまり」で、所有省庁のない無登記のまま国が所有している土地なのです。
ちなみに摩周湖のすぐ近くに屈斜路湖というカルデラ湖がありますが、こちらは尾札部川や跡佐川などの河川があるため普通の湖です。
なぜ湖畔沿いに行けない?
摩周湖の周囲はすべて断崖絶壁となっています。
このため、トンネルでも掘らない限り湖畔沿いにたどり着けません。
また、湖畔沿いに行けたとしても崖となっているため水深はすぐ深くなっています。とても水辺で遊べるようなところではありません。
例えるならコップのような窪地に水が入っているだけの状態です。
そのため、摩周湖を眺めるには崖のてっぺんにある展望台から眺めるしかありません。
このような形状が、河川ができない理由になりえます。
一般的に、川はその川路に必ず緩やかな場所がないと形成されません。
急勾配な坂だけだと水の進行、流失が速く、すぐに水が枯れてしまいます。
たしかに山頂付近の川は急坂にあり流れが速いですが、標高が下がると坂が緩やかになり流れが遅くなりますよね。
湖にできる河川もその湖の湖畔沿いに緩やかな場所があるから水が枯れることなく流れ続けられるのです。
摩周湖はコップのように完全な崖しかないので、急すぎて川ができることはありません。
つまり、冒頭での友人の質問に対して、摩周湖は湖じゃないもんと言ったのは、
≪湖畔沿いに行けない=湖周辺が断崖絶壁=河川ができない=法律的に湖じゃない≫
ということです。
なぜ透明度が高い?
摩周湖は、極めて透明度が高いことで有名です。
1930年8月の透明度調査で、バイカル湖の40.5メートルをしのぐ41.6メートルの透明度を記録しています。これは当時確認された世界最高記録です。この水準は1946年まではおおよそ維持されていましたが、その次に実施された1952年7月の調査で29メートルに低下し、以後20メートル前後の透明度を維持しています。
なぜこんなに透明度が高いのでしょう?
その理由は、河川がないことと水温が低いことにあります。
1.河川がないから
河川がないため、河川生物や人間の生活排水が流れてくることはありません。
生活排水には水を濁らせる有機物がたくさん入っているため汚染の原因につながります。
また、崖のため陸上の生物が侵入する機会が少ないため、その糞などによってバクテリア汚染されることもありません。
河川がない代わりに、土壌から地下水が流れ込んでくるのですが、地下水は土壌によって十分にろ過されるため真水に近い状態です。
唯一水質を悪くする要因は降雨のなかに含まれる不純物くらいでしょう。
2.水温が低いから
摩周湖は年間を通して水温が低いことが知られています。
そのため、バクテリアや原生生物の活動が低下し有機物の分解がほとんど起こりません。
冷たい水は生物が暮らすのに過酷な環境なのです。
この冷たい水温のおかげで、太平洋から流れ込んでくる温かい風が急激に冷やされ霧が発生します。そのため「霧の摩周湖」とよく言われます。
余談ですが、摩周湖の付近にある「神の小池」という池も水温が低く、年間を通して8℃にしかならないため、池の中にある倒木も腐らずに原形をとどめています。
なぜ干上がらない?
阿蘇カルデラも昔は湖があったとされています。しかし、周囲を囲む崖から断層が生じて水を流出させる河川ができたために水が枯れてしまいました。摩周湖のような閉鎖湖はこのような水の流失がないため、水はなくなりません。
では、雨がほとんど降らなくなっても干上がらないのでしょうか?
答えはYesです。
その理由を3つあげます。
1.摩周湖のカルデラが深底だから
コップと平たい皿に同じ量の水を注いだ時、どちらが早く蒸発するでしょうか?
当然平皿に注いだ水の方が早く蒸発しますよね。
深底の鍋と大きいフライパンに500㎖の水を入れ、同じ温度で加熱してもフライパンの方が早く蒸発すると思います。
つまり、水の総容量に対して水蒸気が流出する面(湖面)が大きいほど、水が干上がりやすくなります。
洗濯物を干すとき、ハンガーにかけて服を広げて干しますよね?
これは、水蒸気が流出する面を最大限に広げて乾きやすくすためで、誰もが経験的に知っている知識です。
逆に言うと、流出する面が小さいほど干上がりにくいので、摩周湖のような水深が深いわりに湖域面積が小さい深底の湖は水が蒸発しにくいのです。
ちなみに摩周湖の最大水深は211.5mで日本5位、平均水深に至っては137.5mで日本3位となっています。
2.水温が低いから
水温が低いことも蒸発しにくい要因となります。
同じ水でも100℃の水と0℃の水では、水分子の平均運動エネルギーが大きく違います。高温な水ほど活発に動く水分子が多いため、その勢いで水面から水蒸気として脱出する分子が多いです。
乾燥機は機内を熱くして洗濯物を乾かしますよね。
あれは、洗濯物中の水分子の運動エネルギーを増加させ、水蒸気に変えるためなのです。
というか普通に考えて常温で置いている水よりも、加熱している水の方がすぐ蒸発しますよね?つまりそういうことです。
3.周辺に保水性の高い土壌や樹木があるから
摩周湖周辺の土壌は、腐植質を多く含んだ火山灰土で構成されており、腐植質や火山灰中の軽しょう質、ローム質は保水性に優れているため、地下から水が流出する心配がありません。
また、周辺のトドマツなどの樹木も保水する力があります。
川が永続的に流れていられるのも保水性がある土壌や樹木のおかげで、これらは川の水量の調整に役立っています。
摩周湖も保水性の高い土壌や樹木によって水量を維持させており、その水量は年間を通してほとんど変わりません。
逆に、樹木がなく軽石質を多く含んだ火山灰土のカルデラは水をためるのに適していません。
まとめ
いかがでしたか?
今回は、摩周湖が湖でない理由や展望台しかない理由をできる限り紹介しました。
摩周湖、調べていくうちに不思議で魅力的な湖(水たまり?)だと思いました。
久々の投稿ということで文字数が多くなってしまい読みづらかったかもしれません。
次回からは、短く簡潔にわかりやすく書いていこうと思いますので興味を持った方は是非立ち寄ってください!