うんちく星人の雑学部屋

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ビタミンCは無色?なぜ、ビタミンC=レモンなのか【後編】

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こんにちは。うんちく星人です。

今回は前回に引き続き、なぜビタミンC=レモンなのかについてご紹介していきます。

unchiku-seijin.hatenablog.com

なぜビタミンC=レモン?

C.C.レモン」、「かむかむレモン」、「ポッカレモン」など、レモン果汁を使ってビタミンC豊富をうたった商品は数多くあります。

レモンがビタミンCを多く含んでいるというイメージができたのには、ある歴史が関係してきます。

その歴史を語る上で欠かせない人物がジェームズ・リンドです。

それでは、レモンとジェームズ・リンドの歴史を見ていきましょう!

レモンと壊血病

壊血病の歴史

壊血病とは、ビタミンCの欠乏によって生じる病気のことで、皮膚の潰瘍や歯の脱落、骨折、各部の出血、幻覚などの症状が出て、最悪の場合は死に至る病気です。

原因は、ビタミンCが欠乏することでコラーゲンを作るのに必要な水酸化プロリンなどが作れなくなり、コラーゲンを必要とする軟骨や皮膚組織を脆くしてしまうからです。

大航海時代や18世紀の海上戦争では、戦争による戦死よりも壊血病による病死の方が数倍多かったと言われています。

 

当時、ヨーロッパでは船の大型化、航海の長期化により、航海途中で下船して新鮮な食料を補給するようなことはしていませんでした。

ビタミンCは不安定な物質のため、食材を長期保存しているとすぐに壊れてしまいます。そのため、新鮮な野菜や果物を食べないとビタミンCを十分にとることができません。

また、当時船内の調理に使っていた銅鍋はビタミンCと結合してしまうため、余計ビタミンCの少ない料理を船員は食べていたのです。

このような背景からヨーロッパ諸国の船員は壊血病にかかりやすくなっていました。

一方で、中国やアラスカの船員は途中で新鮮な食料を調達して航海していたので壊血病にかかることはほとんどありませんでした。

 

この厄介な壊血病問題を解決するのに貢献したのがジェームズ・リンドです。

ジェームズ・リンド

ジェームズ・リンドは18世紀初頭にスコットランドで生まれたイギリス海軍医師です。

18世紀に船医として乗船していました。

彼は、1747年戦列艦Salisburyの中で壊血病を発症した船員12人に対してある実験を行いました。12人を2人ずつ6組に分け、それぞれにリンゴ酒、硫酸のアルコール溶液、酢、海水、オレンジとレモンの果汁、ニンニクやカラシナの種を混ぜた下剤を飲ませた結果オレンジとレモンの下剤を飲んだグループだけ症状が回復するという結果を出しました。

ところが、地位の高くないリンドの実験はあまり注目されることはなかったため、その後地位の高いギルバート・ブレーンが「レモンやライムが壊血病に有効」と提唱するまでレモンが壊血病に効くことは信じられませんでした。

レモンが効くことは分かったのですが、当時はビタミンCの存在が知られていませんでした。

その後の数々の研究でビタミンCの存在が知られ、壊血病にビタミンCが関係していることがわかり、「レモンにはビタミンCが多く含まれている」というイメージが定着したのだと考えられます。

これが、ビタミンC=レモンの始まりだと考えられます。

 

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ジェームズ・リンド(James Lind)

 

<余談>
キャプテン・クックとして知られるジェームズ・クックは、リンドの実験をもとに大量の酢漬けキャベツ(ザワークラウト)を積み込み、野菜や果物を積極的に摂取させるようにして、壊血病による死者が出ることのない長期の航海に成功したとされていますが、彼は麦芽汁やロブ(保存しやすいように柑橘類の果汁を煮詰めた濃縮ジュース)が効果的と誤って報告したために、壊血病を完全に追放することはできませんでした。
当時、ビタミンCが熱に弱いことは理解されていませんでした。
そのため、彼は壊血病を解決した英雄とは呼べないでしょう(ダジャレ?)
 

その他の理由

比較しやすいから

前編でもお話ししたように、レモン果実100gあたりのビタミンC含有量は100mgです。

人間はキレの良い数字を好みます。水の沸点や融点が100℃や0℃なのも、人間に一番身近な物質である水がキレの良い数字になるとその他の物質を比較するときに比較しやすいからです。

レモン果汁を使った商品は「ビタミンCがレモン○○個分!」と表示すると、その商品にどれだけビタミンCが入っているか比較しやすいからだと思います。

レモンの食用用途が少ないから

レモンよりビタミンCを豊富に含む食材は、アセロラやピーマン、海苔、グアバなどですが、どれもいろいろな料理に使われたり単にジュースや果物として使用されることが多いです。

その点レモンはどうでしょうか。

チューハイにレモンを絞った果汁を入れてレモンサワーにしたり、からあげなどに添えてあるレモンを絞って風味足しに使ったりと、用途が少ないですよね。(わたしはレモン好きなので唐揚げに添えてあるレモンは丸かじりして食べちゃいます(笑))

このことから、他のビタミンC豊富な食材と違い単純に果物として売れないためビタミンC補給のために栽培され、「ビタミンC商品にはレモン」とされているのだと思います。

一般的に、需要の競合が少ない原材料は安価に仕入れられるためコストの面でもメリットがあるのだと思います。

ちなみに、他に競合が少ない食材でビタミンCが多いのはパセリやケールですが、こういうのが入った炭酸飲料やチューイングガムを買いたいと思う人が少ないから商品化されないのだと思います。

 

レモンの黄色の正体

さて、ビタミンCが黄色くないことはわかりましたが、レモン果汁を使っている商品が黄色いのはなぜでしょうか?

それは、柑橘類特有のフラボノイドという物質が原因です。

フラボノイドは数多くありますが、その中でレモンにはエリオシトリンというフラボノイドが多く含まれています。

エリオシトリンは黄色を呈する物質で、レモンの果皮と果汁に多く含まれているため、皮や果汁が黄色いのです。

ちなみに、オレンジやミカンは、オレンジ色を呈するヘスペリジンというフラボノイドが最も多いです。

 

まとめ

いかがでしたか?

2部にわたりビタミンCとレモンについて語ってきましたが、ビタミンCやレモンにはまだまだわからないことがあります。

これをきっかけにレモンについてすこしでも興味を持ってもらえたらなと思います。

それではまた次回もよろしくお願いします。