太陽と火は全くの別物。核融合のすごさを解説
こんにちは。うんちく星人です。
前回、「火とはなにか?」という記事を書きました。
では、赤く燃える太陽の正体は火の塊なのでしょうか?
結論、太陽は火や炎とは全くの別物です。
ではなぜ、太陽は熱いのでしょうか?
今回は太陽が熱い原理とその原理の応用方法についてご紹介したいと思います!
今回の話は火の知識も含むので火について知らない方はこちらをご覧ください。
太陽が熱いのはなぜ?
太陽には酸素がありません。この時点で燃焼が起きないことは確実です。
ではなぜ熱いのでしょう?
太陽の中心では、核融合という核反応が起きています。
核反応には、核融合のほかに核分裂というものがあり、核分裂は原子力発電所や原子爆弾に利用されています。
この核融合というものは、火の正体である燃焼という現象と全く別のものです。
大雑把に言うと、反応を起こすのに必要な温度と反応が起こった時に生まれるエネルギーの大きさが燃焼に比べ桁違いに大きいです。
実際、核融合が起きている太陽の中心部の温度は1600万℃と超高温です。
核融合は複雑で難しい反応がですが、できるだけわかりやすく説明します。
核融合の仕組み
核融合の材料
燃焼では、可燃性のある原子や分子が酸素分子と結合して酸化物質となりますが、核融合は反応によって元素が変わってしまいます。燃焼は分子の構造が変わるだけで元素は変化しません。
これが燃焼と核融合の大きな違いです。
代表的な核融合であるDT反応というものは、水素の同位体である重水素や三重水素という原子の核同士が結合してヘリウムに変わる現象をさします。
ここで高校化学のおさらいをします。
原子は、電子と核で構成され、さらに核は陽子と中性子で構成されています。電子は-1の電荷(負の電荷)を持っており、陽子は+1の電荷(正の電荷)を持っています。中性子の電荷は0です。
一般的な水素は、1つの電子、陽子、中性子でできています。
重水素は、1つの電子、陽子と2つの中性子でできています。三重水素は1つの電子と陽子、3つの中性子でできています。
要は、重水素や三重水素のような同位体は、普通の原子とは中性子の数が異なる原子のことです。
これらの同位体は地球上ではレアです。重水素は地球上の水素のうち0.015%しかなく、三重水素はもっと少ないです。
しかし、太陽には豊富に存在しているため、核融合が絶えず起こり高温を維持しています。
DT反応では、1つの重水素と1つの三重水素が融合して1つのヘリウム*1と1つの中性子が生じます。
この時、中性子2個が消失するため、反応後の質量(ヘリウムと中性子)が反応前の質量(重水素と三重水素)からわずかに減少します。この質量の減少分が膨大なエネルギーとなるのです。
質量とエネルギーの関係はアインシュタインが相対性理論で「E=mc²」と証明しています。※mは質量(単位:g)、cは光速度(単位:約30万km/h)
核融合に必要な温度
核融合を起こすには、1億2000万℃必要になります。
「あれ、太陽の中心の温度は1500万℃でしょ?全然足りなくない?」
そう思った方がいると思います。
しかし、1億2000万℃というのは地球規模の気圧で核融合を発生させるのに必要な温度で、太陽の中心ような2500億気圧もある環境ではこの限りではありません。
要は超高温でなくても、超高圧であれば数千万℃程度で核融合は成立するのです。
でもなぜ、高温・高圧じゃなければ反応できないのでしょうか?
そもそも、核融合とは正の電荷をもっている核(陽イオン)どうしをくっつけようとすることです。
磁石で考えてください。N極とN極、S極とS極は反発しあって無理やり力を入れないとくっつかないですよね。電荷も同じで+の電荷と-の電荷はひきつけあうのに対し、同電荷どうしは反発しあいます。つまり、核同士は反発するのでエネルギーを使って無理やり近づけないと結合しません。
また、核と電子が互いにひきつけあっている気体の状態では電子の邪魔があり、そもそも核融合できません。まずは水素を1万℃程度にしてプラズマ化する必要があります。
プラズマとは、核と電子が乖離(電離)し核が陽イオンとなり、陽イオンと電子それぞれが自由に飛び回る状態をいいます。物質の状態変化の4形態目といえます。
簡単にいうと、気体をさらに温めるとプラズマになります。
プラズマ化しただけではまだ足りません。陽イオン同士が結合するには陽イオン同士が超高速度でぶつかり合わなければなりません。それに必要なのが1億2000万℃の温度で、この温度になると1万℃とは比べ物にならないほどの速度で陽子が飛び回っているので核融合が発生します。
これに対し、気圧が高いと接触確率が上がります。核融合を発生させるには、陽イオンの接触速度と接触確率を上げる必要があるということですね。
ちなみに、太陽がなぜ気圧が高いのかというと、単に質量が大きいからです。質量が大きいと重力が大きくなるため、圧縮されて物質同士の感覚が狭くなります。
核融合のエネルギー量
重水素と三重水素が融合するDT反応という核融合は、たった1gの水素で石炭13t分のエネルギーを発生させることができます。石油だと8t分です。
これに対し、ウランを原料とする核分裂は1gあたり石炭3t分にしかなりません。
したがって、文核融合は核分裂の約4倍のエネルギーを生み出すことができます。
しかも反応によって生じるのはヘリウムで、核分裂のように放射線物質問題が生じません。
このようなメリットから、現在核融合を発電に使おうという研究が進められています。
核融合の応用と将来性
核融合は、その利用効率の高さと資源の豊富さ、産業廃棄物の少なさから今後の電力供給の手段として使うための研究がなされています。
発電という視点においての核融合のメリットとデメリットを簡単に紹介します。
核融合のメリット
1.エネルギー利用効率が高い
先ほども紹介したように核融合によって得られるエネルギーは膨大です。原子力発電所よりも大量の電力を作ることができます。
2.材料が地球上にたくさんある
核融合の原料は重水素と三重水素です。重水素は安定同位体と言い膨大な水素を含む海にも含まれています。存在比が0.015%だとしても莫大な資源であると言えます。
三重水素は安定同位体でないため自然界にはほとんど存在しませんが、リチウムを使うことで作れます。そのリチウムも地球上に大量に存在するので問題ありません。
石油は今後底を尽きることを考えるとこれは大きなメリットです。
3.放射性廃棄物の発生が少ない
核融合の副産物である中性子が、物質を放射化することがありますが、その影響は核分裂による放射線とは比較にならないほど影響が少ないです。
4.温室効果ガスを発生させない
火力発電と違って、反応によって二酸化炭素のような温室効果ガスを発生させません。ヘリウムは声を変化させるぐらいの影響しか与えず、ほとんど無害です。
核融合のデメリット
1.超高温を作り出さねければならない
1億2000万℃の環境を作るには膨大なコストがかかります。
また、現在の技術では高温を維持し続けることが難しいため、炉の設計や材質、経済性を生み出すための高度なシミュレーションが必要となります。
2.発電所が超大型=土地の問題
実験レベルでも核融合を発生させる炉が大型になってしまっているため、実用化となると相当な大きさが必要になります。
ただでさえ、人口が増加している現代でこの土地問題は深刻な問題となるでしょう。
3.断熱性の心配
炉をしっかり断熱しないと熱が外部へ逃げてしまい、周辺の気温を上げてしまう可能性があります。気温の変化により作物などの生育に影響するため、きちんとした施設の断熱をしなければなりません。
まとめ
いかがでしたか?
太陽がとんでもなく熱いのは、火のような燃焼ではなく核融合のせいだということがわかりましたね。
核融合発電は個人的に期待できる発電方法だと思っているので、是非実現してほしいものです!
明日は仕事なのでもう寝ます。おやすみなさい。